2023年夏、男性から通報があった。
「娘がビルのエレベーターホールでいきなり胸をもまれた」
担当になったのは札幌中央署刑事第1課強行犯係長の藤田雅徳(41)。当時10代後半だった被害女性は弱視で、白杖(はくじょう)で歩いていた。急に背後から襲われ、おびえていた。
防犯カメラの映像で、当時60代の男にたどりつく。逮捕後、雑談にはいくらでも応じるが、事件についてはまったくしゃべろうとしない。結局、証拠不十分で処分保留、男は釈放された。
留置場を笑顔で出て行く男が許せなかった。
被害者と家族に釈放を告げると、「え?逮捕したのに?」。落胆が電話越しに伝わってきた。
諦めきれない。「なんかないべか」。改めて証拠を探す。
すると、同僚から「あっちの…